公正会の皆さまへ 会長からのご挨拶(大阪弁護士会 会長 川下清)

公正会の皆さまへ

会長からのご挨拶

                                          大阪弁護士会   

                                            会長 川 下  清

 【嵐の中の船出】

 法曹公正会会員の皆さま、2020年度大阪弁護士会会長の川下です。皆さまのご支持、ご推薦により無事に当選することができ、4月1日をもって就任致しました。嵐の中、新米船長の舵取りによる船出となりました。

  就任して最初の仕事は新型コロナウイルス対策本部の設置であり、就任後に続く予定の会合のどれを中止し、どれを維持するかを議論しながら就任挨拶を続ける最中に緊急事態宣言が出されました。

【弁護士・弁護士会として、市民への法的なサポートの維持】

  新型コロナウイルス禍によって、多くの困難が生じている中で、問題に直面している多くの人々や事業者に対して法的なサポートをすることは我々弁護士・弁護士会の責務です。また、憲法は、身体拘束を受ける人の弁護を受ける権利を保障し、それを果たすことを我々に委ねています。会員と職員の感染防止に最大限の努力をしながら、これらの業務を維持していかなければなりません。

 感染のリスクは皆同じでしょう。災害に襲われるときは平等ですが、その影響や回復には大きな社会的不平等が生じます。自宅待機や休業等による影響、とくに経済的困難には大きな差異が生じます。これらの困難が社会的に弱い立場にある人々にしわ寄せされることがないよう注視していくこと、適宜の対応をしていくことも、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする我々の責務です。

【委員会・23条照会・法律相談の工夫と、職員への配慮】

 弁護士会の活動の中核である委員会活動は、MLやWeb上の会議にシフトしていただき、しかし、その状態でも委員会活動を沈滞させないようにお願いをして回りました。 

 このような方針に基づき、法律相談業務・当番国選に関する業務を維持しながら、面談相談を電話相談に変更していくなどして、担当する会員の感染リスクを減少し、職員の勤務を徐々に減らして自宅待機範囲を拡大してきました。

 さらに、23条照会の申請等を郵送に限定するなど来館者との接触を減らすよう努めています。

 東京三会が緊急事態宣言によって直ちに法律相談を休止したことについて、当会が相談業務を維持していることと対比して批判する新聞記事が出ました。弁護士・弁護士会の社会責務をなんと考えているのかという批判でした。相談業務を維持している当会と対比された点は、我々の姿勢を評価してくださったものとしてありがたく受け止めていますが、同時に、東京三会には気の毒な思いがしています。我々と東京三会とで判断が異なったのは、感染拡大に対する危機感、政府乃至自治体の自粛要請に対する感度などにおける東京と大阪との相違が大きな要因といっていいでしょう。また、大阪は、我々執行部の決断で決定できましたが、東京は三会の協議が必要になります。

 しかも、この判断は、職員や相談担当の会員の感染リスクと社会的責務をどう果たすかということとの間での悩ましい判断です。評価は結果論にすぎないかもしれません。勤務態勢を縮小し、電話相談に変更するより先に職員や会員に感染者が出ていたら、と思うと、背筋が寒くなると同時に、今もなお綱渡りを続けていることがひしと実感されます。

【これからの課題】

 これまでは、職員の勤務態勢をどのようにし、法律相談業務等をどう維持するかを考えるのが精一杯でした。しかし、これからは、電話相談をさらに展開していくこと、相談された問題を会員が受任して解決に結びつけていく道筋をつけていかなければならないと思っています。

法律事務所もまた中小零細の事業者です。この困難な状況の中で、経営困難に逢着する会員が少なくないと懸念されます。協同組合と連携協力し、サポートする方策を検討していただいています。 

【感謝・今後の航行】

 就任以来まだ1月も経過していませんが、次々と対策を考え、決断する日々を続けているためか、1日に就任挨拶をしたのがはるか昔のように思えます。

 上記方針を理解して、献身的に協力してくださっている職員、社会が直面している様々な困難を認識・理解し、上記方針を支持し、相談を担当して現場を支えてくださっている会員、また様々な提言や情報提供をしてくださる委員会、常議員、強力なサポートを惜しまない先輩役員、そして、朝令暮改のそしりを怖れずなどとごまかしながら、面舵と言った直後に取り舵と指図する船長の無茶な指示を着実に実行してくれる、優秀という月並みな表現では言い表せない7人の副会長の行動力に支えられ、頼りない船長の舵取りにもかかわらず、大阪弁護士丸はなんとか難破しないで航行を続けています。

 春の総会も中止され、皆さまに直接ご挨拶する機会もありませんが、会館などで皆さまのお顔を見ることができたとき、皆様の暖かいまなざしは、嵐の中、暗雲の隙間から漏れ出た陽光のように、なによりの励ましになっています。

 今後とも2020年度執行部への暖かいご支持とご協力をお願いしてご挨拶に代えさせて頂きます。

 (令和2年4月23日記)

2020年4月24日 15時00分