桜田門駅5番出口(大阪弁護士会 会長 森本宏)

地下鉄有楽町線の「桜田門」の駅といえば、皆さんは何を思い出しますか。私は、法務省旧本館(赤レンガ棟)です。司法試験の口述(つまり最終合格)の発表は、旧本館の中庭に張り出され、それを見に行った思い出があるからです。

1984年(昭和59年)ようやく論文試験に合格して、口述試験の発表を見に、地下鉄で有楽町線桜田門駅に移動し、5番出口からでると法務省の赤レンガ棟の前に出ます。

反転するように歩き、赤レンガ棟前を入り口に向かって歩いていたところ、「森本、なに、深刻な顔して歩いてんだよ!」と声をかける人がいました。顔を上げるとそこにいたのは、大学の同級生の大塲亮太郎さんでした。

私は弁護士になりたくて早稲田大学法学部に入学したものの、親戚にも周囲にも法曹はいませんでしたので、大学2年生の時に蛍法会(けいほうかい)という司法試験受験サークルに入れていただいて受験そのものや受験勉強の仕方を教えていただいていました。

大塲さんは、3年生の時に蛍法会の幹事長をするなど、その会の中心的な存在でした。司法試験は、私より1年早く合格され、声をかけてこられた時はすでに修習生でした。

「いや~口述ではいろいろやらかしていて、大丈夫かなと心配になってきて」というと、彼はニヤッと笑って、「大丈夫だよ。受かってたよ。」と。それから、大塲さんに礼を言ったかどうかも、記憶していません。彼に会うまでの不安な気持ちや、彼から声をかけられたときの様子や彼の口調まで、今も鮮明に覚えているのに・・・。

大急ぎで、法務省の中庭に入り、自分の受験番号と名前を発見すると、当時は携帯電話など存在しない時代ですから、また有楽町線の桜田門の駅に大急ぎで引き返し、公衆電話からお袋に合格の一報を入れました。

2023年度(令和5年度)に日弁連の常務理事を拝命して、月に一度は1泊2日で日弁連の理事会に出席することになりました。宿は、金子先生が会長の時によく使われていたルポール麹町(地方公務員共済)に泊まることにしました。ルポール麹町は有楽町線の麹町の駅すぐ近くですので。麹町の駅から桜田門の駅まで有楽町線で移動して、5番出口をでて、赤レンガ棟の前で地上にでて、反転するように歩き出し、赤レンガ棟の前をあるいて、東京地裁の前を通り過ぎた角を左に曲がれば日弁連です。

たまたま、大塲さんは、その年の春に検察官生活に別れを告げて(名古屋高検検事長で定年退官)北浜法律事務所の東京事務所に入所いただきました。

ちょうどそんな年だったので、2023年に日弁連に通っているときは、39年前の1984年に大塲さんから声をかけられた瞬間の、不安だった受験生活の暗いトンネルがついに終わったという安堵と将来の希望に胸を膨らませたあの瞬間を、決して忘れてはいけないという戒めを込めて、神様か仏様かは知りませんが、誰かが私に赤レンガ棟の前を歩く機会を与えてくださったんだなと感謝しつつ、法務省旧本館(赤レンガ棟)の前を歩いておりました。地下鉄有楽町線の「桜田門」駅5番出口、私にとっては、一生忘れることのできない場所です。

2025年7月11日 17時31分